安倍元首相への追悼演説、前首相からみた5つの視点

政治(国内)

 野田元首相は2022年10月25日の衆院本会議で、参院選の遊説中に銃撃されて死亡した安倍晋三元首相に対する追悼演説を行った。政治的な立場が大きく異なる野田氏の視点から安部氏を振り返り、その死を悼んだ。

①政権交代前の党首討論
②政権交代直後の2人だけのやり取り【秘話】
③10年前の謝罪
④首脳外交の主役
⑤生前退位の環境整備【秘話】

 はじめに、亡くなられた安倍元首相に哀悼の誠を捧げ、長年日本のためにご尽力頂いたことに感謝を申し上げます。またご家族の安倍洋子氏、昭恵夫人の方々にはお悔やみを申し上げます。

①野田氏は演説で、「最も鮮烈な印象」に残っている安部氏との論戦として、自らが首相だった12年11月の党首討論を挙げた。与党と野党第1党の党首同士が、互いの持てるすべてを賭けた、火花散らす真剣勝負であり、いつの時も手強てごわい論敵、 仇のような政敵と表現した。

②12年衆院選で政権交代した直後、皇居で安倍氏の親任式に前首相として立ち会った際、2人きりになった控室で、安倍氏から「あの『ねじれ国会』でよく頑張り抜きましたね」と声をかけられたことも紹介した。安倍氏は議場では「闘う政治家」だったが、国会を離れ、ひとたび 兜を脱ぐと、心優しい気遣いの人でもあった。あなたの再チャレンジの力強さとそれを包む優しさは、思うに任せぬ人生の悲哀を味わい、どん底の惨めさを知り尽くせばこそであったのだと思う、と惜しんだ。

③野田氏は平成24年暮れの選挙戦、大阪の寝屋川で遊説をしていた際、安倍氏の身体的な特徴や病を抱えている苦しさを揶揄し大失言であったと述べた。

④安部氏は、首脳外交の主役で、米国のオバマ、トランプ両大統領と親密な関係を取り結んだこと、「人と人との距離感を縮める天性の才があった」、と称えた。

⑤平成29年1月20日夜、2人きりで陛下の生前退位に向けた環境整備について意見交換し、「政争の具にしてはならない。国論を二分することのないよう、立法府の総意を作るべきだ」という点で意見が一致したことを紹介した。その後皇室典範特例法へと大きく流れが変わる潮目であったことも述べた。

 安部氏は憲政史上最長の在職日数3188日、延べ196の国や地域を訪れ、首脳会談は1187回行った。最高責任者としての重圧と孤独に耐えながら、日本一のハードワークを誰よりも長く続けた安倍氏に、心からの敬意を表した。演説終了後に野田氏は安倍昭恵夫人と面会し、演説原稿と安倍氏の議席に飾った花を手渡した。昭恵氏は「野田先生にお願いして良かった」「原稿を仏壇に供えたい」とも語ったと、NHK読売新聞では伝えた。


タイトルとURLをコピーしました